排尿困難(漢方ミニ知識)

漢方で、ゆううつなトイレを快適に!

排尿困難とは、尿が出にくいことをいい、力を入れないと出ない、出かたに勢いがない、だらだらと出て切れが悪い、尿意があるのに出ないといった症状を指します。

尿は、血液で運ばれた体内の老廃物なとを腎臓でろ過したもの。
尿が腎臓の腎盂にたまると、尿管の運動によって膀胱へ流れていきます。
膀胱に尿がたまると、神経を通じて脳に伝わり、脳の指令を受けて尿意が起き、尿道から排出されるというのが、排尿のしくみです。

年をとると、膀胱の筋肉が衰え、尿道がスムーズに開かないため、尿が出にくくなります。
また、尿道の間に腫瘍や結石などがあると、膀胱に尿がたまっても、排尿が難しくなります。
そのほか、高齢の男性に多い前立腺肥大症や、前立腺がん、前立腺結石、尿道結石、尿管結石などが、尿を出にくくする原因として考えられます。
尿管がふさがっている場合(尿閉、無尿)は、手術が必要な場合もあります。

漢方薬にできることは?

漢方では、全身症状の改善を目標にしています。
体力を回復し、血行を良くし、冷えをとり除きながら、つらい症状を楽にしていきます。

排尿困難によく使われるのは、「八味地黄丸(はちみじおうがん)」や「長命丸(ちょうめいがん)」です。
この漢方薬は、比較的体力の衰えた人の腰痛、排尿痛などを伴う場合で、主として高齢者の前立腺肥大や膀胱炎に用いられます。

残尿感、排尿通がある場合、体質にこだわらず広く使われるのは「猪苓湯(ちょれいとう)」です。
そのほか、「清澄(せいちょう)」、「制竜(せいりゅう)」などを、体質・症状に応じて使い分けます。

生活の知恵と予防

・冷えは排尿機構にさまざまな悪影響をもたらします。適度な水分補給は大切ですが、冷たい飲食物をとりすぎないようにしましょう。
・前立腺にトラブルがある場合、下腹部を充血させる長時間の座位(あぐらなど)を避けましょう。
・アルコールを取りすぎないこと。排尿をつかさどる神経に作用し、尿が出にくくなることもあります。
・排尿をがまんしないこと。

【監修】 石橋晃先生 ツムラ漢方

更年期障害(漢方ミニ知識)

本来の自分を取り戻して 豊かで楽しい毎日を!

 更年期障害は、40歳過ぎごろから、50代半ばごろに見られる、閉経前後の女性ホルモン減少に伴う身体的、精神的な諸症状です。とくに、卵巣機能が衰えて、卵巣で作られるエストロゲンが消失することで、体と心にさまざまな影響を及ぼします。症状の出方には個人差がありますが、のぼせ、発汗、冷え、イライラ、憂鬱、不安感、不眠、めまい、動悸、頭痛などの「不定愁訴」が現れます。気力がなくなったり、物忘れがひどくなる人も。体の変調に加えて、家庭環境の変化(子供の巣立ち、親の介護など)や個人の性格といった背景も影響して、つらい症状を引き起こします。また、男性も50歳を過ぎた頃から女性と同じような症状が現れることがあります。女性に比べて緩やかですが、男性ホルモンの減少が影響しています。主にのぼせ、動悸、性欲の減退、腰痛、不眠、不安感、焦燥感といった症状が現れます。これからの生活をより豊かにするためには、自分に合った方法で前向きに過ごすことが大切です。

更年期障害(女性)の薬物療法例
漢方療法
さまざまな不定愁訴が現れる場合に有効です。個人の体質、症状にあった薬で崩れた心身のバランスを調えます。
ホルモン補充療法(HRT)
体内分泌が減少。消失した女性ホルモンを補い更年期症状を改善します。また、骨粗鬆症の予防にも有効です。
精神安定剤・抗うつ剤・心理療法
ホルモン補充療法、漢方療法だけでは回復せず、原因が自律神経性ではなく心因性の場合に有効です。
漢方薬にできることは
 更年期障害では、心身両面にわたるさまざまな症状が起こります。とくに、血管運動神経障害(ほてり、のぼせ、異常発汗、動悸、高血圧、低血圧、手足の冷えなど)や精神神経障害(頭痛、めまい、立ちくらみ、不眠、耳鳴り、不安感、イライラ、気力減退、抑うつ、記憶力低下など)が多く見られます。検査で異常が見つからないけれど多彩な自覚症状があらわれる「不定愁訴」は漢方薬の得意分野の一つ。イライラや、不安、不眠、気分がふさぐといった精神症状には加味逍遙散(かみしょうようさん)、頭痛、めまい、肩こりがあり、のぼせやすく、ときに下腹部に痛みがある人には桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、疲れやすく貧血気味で冷えもある場合は当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)などを、個人の体質、体力、症状などにより使い分けます。

くらしの中の予防法
更年期はだれにでも訪れる生理的なものだと割り切って、物事をあまり思いつめないようにしましょう。
栄養バランスのとれた食事をとりましょう。
睡眠をたっぷりとりましょう。
適度な運動を心がけ、体力をつけておきましょう。

【監修】 麻生武志先生 ツムラ漢方

胃の不快な症状(漢方ミニ知識)

丈夫なおなかですっきり元気!

 胃がしくしく痛む、胃がもたれる、胃がはる、食欲がない、吐き気がする…。胃の調子が悪いと感じることはありませんか。
胃は体調やストレスの影響を受けやすい、とてもデリケートな臓器です。胃の不快な症状の原因としては、胃の運動機能が低下して起こるタイプ(FD)と、ピロリ菌やストレス、消炎鎮痛剤などの薬剤により、胃酸と、自分の胃を胃酸から守る防御機能とのバランスがくずれて、胃の粘膜が傷つき起こるタイプが考えられます。
 胃には、摂取した食物をためておく「貯留機能」、胃酸を混ぜ合わせてドロドロにする「攪拌・混和機能」、ぜん動・収縮によって十二指腸に送り出す「排出機能」という連続した複雑な運動機能があります。始めにしっかり「貯留」するためには、胃が十分にリラックスして、摂取した食物の量に応じて胃壁を拡げることが大事です。この胃の「リラクゼーション」が障害されると、胃が膨らまず、十分の量が摂れないし、次におこる排出機能も障害され、腹部の膨満感、胃もたれ、食欲不振などの不快な症状を引き起こすのです。

漢方薬にできることは
 西洋薬には、胃酸分泌を抑制するもの、胃の運動機能を回復させるものはたくさんありますが、胃の貯留機能を改善する薬はありません。漢方薬には、胃のリラクゼーションをうながし貯留機能を改善させる六君子湯(りっくんしとう)があります。六君子湯には、排出機能を高め、胃の血流をよくして胃粘膜を保護する作用もあります。また、胃をはじめとする消化管はストレスに弱いといわれますが、六君子湯には気分をすっきりさせる抗ストレス効果もあるのです。
 そのほかにも、個人の体質・症状に合わせて、平胃散(へいいさん)、半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)、芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)、安中散(あんちゅうさん)など多くの漢方薬が使われています。

くらしの中の予防法
暴飲暴食を避け、規則正しい食生活をすること。
強いアルコール、コーヒー、たばこ、香辛料などの刺激物や油っぽいものは控えましょう。
牛乳、卵、豆腐などを積極的にとりましょう。
繊維の多い野菜はよく煮てやわらかくし、消化をよくしましょう。
肉や魚は細かく切るかミンチに。
禁煙しましょう。
ストレス解消を心がけ、適度な運動などで気分転換しましょう。

【監修】 原澤 茂先生 ツムラ漢方