脳卒中とはなにか

脳卒中とはなにか

藤田医科大学 医学部 脳卒中科

松本省二

今回は、脳卒中といわれる疾患について、ぜひ、皆様に知っておいていただきたいお話をします。

脳卒中を一言で説明すると

脳卒中は、脳の中の血管が詰まったり、破れたりして、急に手足が動かせなくなったり、言葉がうまく話せなくなったりする疾患です。昔から、中風や中気など様々な名前で呼ばれてきました。現在、脳卒中に対する治療が非常に進歩していますので、脳卒中になっても早く治療を受けることされできれば、後遺症が軽くすむ可能性が高くなっています。

脳卒中には3つの種類があります

脳卒中には、下の図(図1)のように3つのタイプがあります。

  1. 脳の血管がつまることでおこる「脳梗塞」
  2. 脳の細い血管が切れることでおこる「脳出血」
  3. 脳の太い動脈に瘤ができて(脳動脈瘤)、それが破れることでおこる「くも膜下出血」

図1. 脳卒中の3つのタイプ

いずれのタイプの脳卒中も、発症した場合、一刻も早く脳卒中専門病院で治療を受けることが重要です。

気づくことからはじまる脳卒中治療

脳卒中を発症した場合、まず、脳卒中の発症に気づくことが必要です。ご自身でもご家族でも同様です。脳卒中の発症に気づくことができないと、救急車をよぶことができません。

脳卒中のなかでも、くも膜下出血は、発症すると、いままでに経験したことのないような激しい頭痛がでることが多く、その様な場合には、すぐ救急車をよぶ必要があることを覚えておいてください。

脳卒中を疑う際の、頭痛以外の症状を紹介したいと思います。

下の図(図2)は、脳卒中を疑うための3つのポイントです。このうち、1つでも急に症状が出れば、7割の確率で脳卒中であることがわかっていますので、1つでも急に症状が出れば、自信をもってすぐに119番に電話して救急車を呼んでください。

簡単に各ポイントの説明しておきます。

  1. の麻痺:「イーっといってみて」と声をかけて、顔の片方だけしか動かなければ、顔の麻痺があると判断します。通常は、イーっというと口の端は斜め上に上がりますが、麻痺がある方の口の端は上がりが悪くなりますので、そのような状態であれば、顔の麻痺があると判断します。日頃より、ご自身で鏡をみながらイーっといって、口の端の動きを確認しておいてください。
  2. の麻痺:手のひらを上にして、両手(実際には腕)を前にならえ、のように前に突き出してもらい、片方の腕が下がれば、手の麻痺があると判断します。
  3. 言葉の障害:言葉については、たとえば「今日は天気がいい」といってもらって、うまく言えないときは言葉の障害があると判断します。

図2. 脳卒中を発症した時に、自信をもって脳卒中を疑うためのポスター

脳卒中の専門病院の体制について

昨年、日本脳卒中学会は24時間365日体制で、脳卒中の疑いのある患者さんを受け入れ、脳卒中の治療を迅速に提供できる全国の約980病院を「一次脳卒中センター」という名称で認定しました。

脳の血管が血栓などで詰まるタイプの脳梗塞では、詰まった血栓を点滴で溶かすtPA(ティピーエー)とういう治療が有効ですが、治療開始が遅れると効果は弱くなるばかりか、逆に副作用が多くなるため、脳梗塞を発症してから4時間30分以内しか治療適応がありません。しかもこの治療は、治療前に病院での診察や検査が必要で、これらに約1時間はかかってしまいます。そのため、脳梗塞を発症した場合、3時間30分以内に「一次脳卒中センター」に到着できないとtPA治療を受けることができません。

なので、脳卒中を発症した場合、そのことに気づき、すぐに救急車を呼んで、一刻も早く「一次脳卒中センター」に到着するように行動することがとても大事になります。

脳卒中の予防、脳卒中を再発させないための秘訣

いままで、脳卒中の種類と脳卒中になった時のどう行動するかについての話をしてきましたが、脳卒中の発症を予防したり、脳卒中の再発を予防することも重要です。

私の外来でいつも患者さん説明している脳卒中にならない、または、脳卒中を再発させない注意点を、簡単に説明しておきます。

脳卒中は原因として、加齢の他、生活習慣病(高血圧、脂質異常症、糖尿病など)や心房細動という不整脈などが知られています。日頃から、かかりつけ医を持ち、生活習慣病や不整脈の検査や治療を受けるようにしてください。特に心房細動という不整脈は、自覚症状がないことも多く、定期的に心電図検査を受けたり、ご自身で脈を測る練習をしておくことが重要です。また、くも膜下出血の原因となる脳動脈瘤は無症状のことがほとんどですので、脳ドックで脳の検査を受けることをお勧めします。

  1. 生活習慣病(高血圧、脂質異常症、糖尿病など)の予防と治療
  2. 不整脈の検査や治療、ご自身で脈を測る練習
  3. 脳ドックなどで、くも膜下出血の原因となる血管の瘤(脳動脈瘤)を見つける

最後に

脳卒中について、ぜひ、皆様に知っておいていただきたいお話をしました。今回、紹介した治療以外にも、脳卒中専門病院では血管内治療(血管の中からの治療)や外科手術によって脳卒中の後遺症を軽くできる可能性があります。日頃より、脳卒中にならない、再発しない様に気をつけ、それでも脳卒中になった時には、それに気づき、できるだけ早く脳の専門病院(一次脳卒中センター)に到着することが重要であることを覚えておいてください。日頃から、上のポスターのサインに慣れておくと、いざという時にきっと役立つと思います。